ワインの製造方法

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広い意味でのワイン作りはブドウの栽培と醸造に二分できますが、ワイン産地ではワイン作りと言えば醸造を指し、醸造学は英語でエノロジーと言いいます。これに対しブドウ栽培の技術や学問はヴィティカルチャーと呼ばれています。海外の大学はブドウ栽培と醸造学の両コースを持つのが一般的です。 ワインの生産主体はフランスのボルドー地域においては「シャトー」、ブルゴーニュ地域においては「ドメーヌ」と呼ばれることが多いです。フランス語の「シャトー」は、もとは城館をあらわす言葉ですが、ボルドー地域においては転じてぶどう園や管理場、生産者のことをも指します。主なものではシャトー・ムートン・ロートシルト、シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・マルゴー、シャトー・ラトゥールなどがあり、イタリアにおける「カステッロ」、ドイツの「シュロス」、スペインの「カスティーリョ」も同様です。「ドメーヌ」は、フランス語で「土地」をあらわす語で、カリフォルニアワインなどで「エステート」という語を使っているのもドメーヌと同義にあたります。

■葡萄作り

どんなに醸造の技術が進歩しても良いブドウからでしか良いワインは作れません。そのためブドウ作りは醸造以上に重要であると言えます。ワインに使われるブドウの種類は基本的にはヨーロッパ種で、品種はサルタナ(トンプソン・シードレス)種など極一部に生食用に使われるものもありますが、ほとんどはワイン専用です。一般にワイン専用のブドウは生食用のブドウよりも粒が小さく、皮が厚く、種が大きく、甘みと酸味がより強いです。主なものにカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどがあります。どのブドウをどの程度使うかは味の特徴を決定する大きな要因です。現在ワイン用ブドウとして作られる品種のほとんどがヨーロッパ種であるので、ワイン用ブドウの生育に適した気候は地中海性気候等のヨーロッパの環境に準じたものとなります。気候に続いて土壌も重要な要素です。土壌に関してはカリフォルニアのように、あまりに栄養豊富でおまけに深いと樹が繁り過ぎてかえって良いブドウが作りにくくなってしまいます。たとえ土地が痩せていても、水はけが良くて、ブドウが深くまで根を張ることができる程度に土が硬くなければ、ブドウの栽培には適しています。土壌の中の栄養素もまた味の特徴として出ることがあります。しかしその栄養素のブドウへの取り込みは台木の種類にも影響されます。これらにブドウが栽培される畑の日当たりや局地的な気候などの要素を加え、それを一くくりにして「テロワール」と呼びます。ブドウが生育するに当たり、樹が大きくなりすぎたり、あるいは房になる実の数が多くなりすぎたりすると一つ一つの粒に与えられる栄養が少なくなり、ワインにした際に品質を下げることになり、多くの場合は、ブドウの樹は剪定などを行ってあまり大きくなりすぎないようにし、房は間引きを行うことになります。その年に雨が多く、日照量が少ないとブドウの生育が悪くなり、そこからできたワインは糖分に乏しく腐敗果の混入の恐れが増えます。逆に日照が良すぎ、生育が早すぎると糖分が強くなりすぎ、酸味とのバランスが悪くなります。現在では転じてブドウを収穫した年のことをヴィンテージと呼び、その年の出来不出来によってワインの出来が変わります。そのために各国のワイン関連組織やワイン専門誌などによってヴィンテージチャートが発表されます。安価なワインでは品質を安定させるために複数の年のワインを混ぜた「ノン・ヴィンテージ」であることが多いです。シャンパンはノン・ヴィンテージが一般的であり、産年表示された「ヴィンテージ・シャンパン」は、高級品に限られます。

■醸造

醸造のいくつかの段階で酸化防止剤としても知られる二酸化硫黄またはその塩が添加されます。亜硫酸には、雑菌の抑制および殺菌、葡萄の皮に含まれる酸化酵素の阻害、果汁中の色素の固定、ワインで発生することのある過酸化水素の除去、酸素の除去等の様々な重要な働きがあります。亜硫酸は人体に有害な物質としても知られるが、フランスのワイン法では必ず亜硫酸を添加することを義務付けているように少量であればほとんど問題はありません。しかしこれを気にして添加しない製法もあり商品化されているがまだ研究段階なので、そうして造られた製品は往々にして品質が低くなってしまいます。また、日本やヨーロッパ諸国、アメリカなどでは、製品中の亜硫酸濃度が厳しく規制されています。日本で販売されているワインの『無添加ワイン』とは亜硫酸が無添加であることを意味しています。

■収穫から搾汁

醸造するには、まず葡萄を収穫しなければなりません。葡萄の収穫は糖度が14~26度程度になったところで、鋏または機械で行います。収穫時期をいつにするかということもまたワインの味を決める重要な要素で、単純に糖度が高いだけでは酸とのバランスが悪い物になります。この際に病気のもの・生育が悪いものは取り除きます。伝統的なワインの製造方法は、ブドウの芯を取り除き、実の皮を破ります。最近のワイン工場ではステンレス製の除梗破砕機を使用し搾汁します。この次に赤ワインでは果皮や果肉の混ざったままの果汁を発酵させ、白ワインでは圧搾機にかけて果汁を搾り出した(搾汁)後、果皮や果肉は捨てて発酵させるが、一部の白ワインではスキンコンタクト法と言い「破砕した果実と果汁を1~24時間接触させた後に搾汁する」方法もあります。ロゼには様々な製法がある。多くのワイン専用品種では収穫した果実重量の55~65%程度の果汁が得られ、大粒生食用品種の巨峰等では80~85%程度の果汁を得、渋みとなるタンニンは皮或いは種子に由来し、種子のタンニンはアルコールによって溶出します。

■主発酵(一次発酵)

発酵させるに当たり、ブドウの果実には天然の酵母が取り付いており、果汁が外に出ることで自然にアルコール発酵が始まります。伝統的な製法では酵母には手を加えない自然発酵が主流であったが、現在では、安定した発酵をさせるため、特別に培養した酵母を使用した酒母を添加し、それ以外の菌を作用させない方法が取られています。その後、場合によっては糖が添加され、この後、赤なら約20~30℃、白なら15~18℃に保ち、数日から数十日かけて発酵させたのち、圧搾によって液体成分を搾り出します。目的の発酵度合いになった所で、発酵を停止させることもあります。アルコール発酵中に発生する炭酸ガスにより一緒に仕込んだ果皮や種が浮き上がり、好気的な微生物の作用を受けやすくなるため、ピジャージあるいは撹拌や循環により固形分が常に液体に浸った状態を維持します。酵母による発酵の成果として十分に発酵した場合、糖度計による計測糖度の約1/2の値のアルコールと二酸化炭素が生成され、目的の発酵度合いになったところで、液体と固形分を分離します。このとき圧力をかけずに自然と流れ出た液体が「フリーランワイン」で、残った固形分を圧縮し搾った液体が「プレスワイン」である。「フリーラン」「プレス」は混合されるが、一部では別々に二次発酵から瓶詰めを行い、各々が特徴を持ったワインに仕上がるというわけです。

■二次発酵とマロラクティック発酵

搾り出された液体は、ステンレスやコンクリート製のタンク、木製の樽に貯蔵され、残っている糖分を酵母により更に発酵させます。木製の樽を利用するとその香りなどがワインに影響し、その効果が良い評価を与えられることがあります。一方ステンレス製のタンクではワインへの影響がないため品質管理がやりやすくなるという利点があり、近年はステンレス製タンクを利用する生産者も増加しています。熟成期間は数十日から数年と様々で、底にたまった滓は随時回収します。二酸化炭素を大気中に発散させず液中に封じ込めた物はスパークリングワインとなります。ブドウとリンゴでは二酸化炭素のとけ込みやすさが異なります。この後、赤ワインでは乳酸菌が投入される場合がありますが、乳酸菌によるマロラクティック発酵、略してMLF発酵はリンゴ酸を乳酸と二酸化炭素に分解し、酸度を減らす働きがあります。

■澱引き

発酵が終わったワインは、酵母や酒石などの澱が沈降するため、遠心分離、ろ過、静止などにより澱を分離します。 また熟成期間中のワインも、澱が生じるので適宜、澱引きを行います。

■瓶詰め

貯蔵後はガラス瓶などの容器に詰め、コルクなどで栓をし、この後、出荷されます。オーストラリアやニュージーランドでは汚染等が問題になるコルクの代りにスクリューキャップもよく用いられる。安いワインはバッグ・イン・ボックスと呼ばれる段ボール箱に入った特殊な薄い袋に詰めて売られることも多いです。これは、輸送コストが安く、空気が入りにくいため開栓後ワインが酸化しにくいのが特長です。赤・白ともにほぼ全工程で、なるべく空気との接触を断つ必要があり、一部の工場では窒素充填環境下で発酵以降の工程を行います。多くの場合、空気と共に酢酸菌が侵入し酢酸が生じ、酸味の強すぎるワインになったり腐敗状態となってしまいます。酸化防止剤は、日本では上記の2つの物質以外は認められていませんが、南米などから赤道を越えて船で輸送されるものは、多くの場合に保存料として認められているソルビン酸が添加されています。搾汁後に残った種子はグレープシードオイルの原料として利用されます。澱の酵母は加工後に健康食品として販売されることもあります。
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